「私はシャルリー」を商標登録、営利使用を規制へ ― EU ―
2015年1月7日に起きたパリ風刺週刊誌本社襲撃事件の抗議として作成したスローガンが商業目的で利用されているとして、スローガン考案者 が商標登録を検討している。
(参照:マドプロ出願でEU(欧州連合)を指定することはできますか?)
問題となっているスローガンは「JeSuisCharlie(私はシャルリー)」である。仏ファッション誌のグラフィックデザイナー、ジョアシム・ロンサン氏(39)が 事件の犠牲者たちとの連帯を示すためTwitter上でのハッシュタグとして「#JeSuisCharlie」を考案した。
しかし、このスローガンが拡散して今やマグカップやTシャツといったものにプリントされて販売されるという仕方で商業目的に利用されているという。
考案者はこの事態に心を痛めており、商業目的での利用を防ぐために商標登録することを検討し始めた。フランス特許当局にはすでに120件ほども「私はシャルリー」を商標登録したいとの申請が出されているが、いずれも却下されているという。
商標登録制度は、もともと商業のための制度ですから、「私はシャルリー」を商業で利用させないために、商標登録をするというのも、少し矛盾している感じもします。ジョアシム・ロンサン氏は、商業に利用しない限りは、第三者が「私はシャルリー」を使用することは、歓迎するはずです。このスローガンは、もともと、テロ被害に遭ったフランスの新聞社との連帯を呼びかけるメッセージだからです。
確かに、テロに対して全世界の国民が連帯して立ち上がろうとするメッセージの力は、そのスローガンが商業的に利用されれば、よくない影響を受けるかもしれません。そういった政治的なスローガンを商業で利用しようとする人もよくありませんが、もともと主に商業に関する業務上の利益の確保を目的とした商標制度を利用して、スローガンの商業上での使用を禁止しようとすることは苦肉の策と言えましょう。出願を考えているジョアシム・ロンサン氏は、スローガンを全く商業的に利用しようとする気はないのですから。
ですが、今回の事例は、商標登録制度の利用は、必ずしも商業に関する業務上の利益の確保が目的であるとは限られず、このような全く商業とは関係のない目的で行われる場合もあるということを、示しているともいえます。
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